皮質橋網様体脊髄路とは?

皮質橋網様体脊髄路とは?

はじめに

私たちが、意図した動きをスムーズに行うためには、運動に先行する姿勢制御が重要です。

腹内側系の中の一つである皮質橋網様体脊髄路の働きを知っている、知らないでは評価、治療の考え方が大きく違ってきます。

何かに手を伸ばしたり、足を一歩前に出そうとする時に、バランスを崩さずにその動きを実現するために、この皮質橋網様体脊髄路の働きが重要です。

そこで今回のテーマは、皮質橋網様体脊髄路についてです。

経路と3つの特徴

皮質橋網様体脊髄路の経路は、大脳皮質(運動前野・補足運動野)➡︎大脳基底核➡︎網様体➡︎脊髄前索を下降していきます。

上肢や下肢などの随意運動に先行して体幹、上下肢のアライメントや筋緊張を調整する「姿勢制御」を行います。

四肢末梢での「巧緻運動」と、これを支える「姿勢制御」とは、異なる神経機構によって実現されます。

姿勢制御について、詳しくは、
こちらをご覧ください。

特徴① 「同側性

主に同側の体幹・骨盤・四肢近位部の姿勢筋緊張のコントロールを行い、運動開始前におこる姿勢制御に関与しています。(正確には両側性支配)

つまり、同側体幹・下肢伸筋群の促通です。

同側というのは、右脳は右半身を、左脳は左半身をコントロールしています。

※それとは別に、皮質延髄網様体脊髄というものもあります。
主に反対側の四肢近位部(~遠位部)の姿勢筋緊張のコントロールを行い、運動に随伴して起こる姿勢コントロールに関与しています。


>>皮質延髄網様体脊髄路について、詳しくはこちらをご覧ください。

特徴② 「無意識」

適切な運動の発現には、姿勢制御が必須ですが、姿勢制御の多くが無意識のうちに遂行されます。

皮質橋網様体脊髄路は、予測的姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustment:APA)に関与しています。

予測的姿勢制御は、目的とする行動の計画運動プログラムで実現される「予測的な過程」であり、随意運動を達成するためには、意図することが重要となります。

・予測的な筋活動は、主動作筋の活動に先行
・予測的な活動パターンは、今からやろうとしている運動の方向・スピード・力などに依存する


先行するとありますが、運動が始まったら終わりではなく、運動を行っている間もずーっと姿勢制御システムが活動しなければなりません。

特徴③ 「姿勢・課題・環境依存」

皮質橋網様体脊髄路による予測的姿勢制御は、姿勢や課題・環境によって求められる度合いが変わってきます。

臥位姿勢よりは座位姿勢。座位姿勢よりは立位姿勢の方が、よりこの経路の働きが求められます。

リーチ 動作においては、例えば左前に手を伸ばしていこうとすると、左前に倒れないように右後ろに姿勢を安定させるような筋活動が起こります。

逆に、右前に手を伸ばす時には左後に安定するような筋活動が起こります。

また、

皮質橋網様体脊髄路の働きは様々な脳領域から修飾されます。

例えば、

・視覚情報により、予測する運動に必要な軌跡や力加減などを見積もることもあります。視覚からの情報は意識的にも、無意識的にも運動に影響を及ぼします。

・練習や経験(運動学習)により、修正・発現(発達)されていきます。


つまり、皮質橋網様体脊髄路の働きを活性化するためには、より活動的な姿勢で、課題の提供の仕方や環境設定を考慮していく必要がありますね。

患者さんにベッド上に寝てもらって、マッサージや関節可動域訓練を提供するだけでは、この皮質橋網様体脊髄路、姿勢制御システムに対しては介入できません。

運動発現の基盤となる「身体図式」の知識も重要となります。
こちらをご覧ください。

抗重力伸展活動に関与

いわゆる、抗重力伸展活動に関しています。

皮質橋網様体脊髄路は、重力対して伸び上がることをしています。

しかし、伸び上がるだけでなく、重力に対してコントロールしながら屈んでいくことにも重要です。

これは「従重力伸展活動」と呼ばれています。

例えば、下方へのリーチ動作や床へしゃがみ込んでいく動作が挙げられます。

これらの動作には、各関節に屈曲の要素が求められます。

動作をゆっくり遂行していくためには、ら身体の質量中心(COM)を下げるような屈曲を強めるのではなく、徐々に伸展を緩めていくと表現した方が良いでしょう。
皮質延髄網様体脊髄路との相互作用により、姿勢をコントロールしていきます。


先ほども述べましたが、運動を行っている間ずーっと姿勢制御システムが活動しなければなりません。

まとめ

・腹内側系の中の一つである皮質橋網様体脊髄路の働きを知っている、知らないでは評価、治療の考え方が大きく違ってきます。

・皮質橋網様体脊髄路は、同側の体幹・下肢の伸展を促通します。

・これには、運動のプログラム・意図することが重要です。

・どの姿勢で、どんな課題で、どんな環境で練習するか、リハビリを提供するうえで考える必要があります。

最後までありがとうございました。