定位(オリエンテーション)について

定位(オリエンテーション)について

はじめに

姿勢制御のところで、以下のように記載しました。

・定位とは質や方向性をコントロールし、予測的に行われる制御(Proactive)
・安定性とは強さや速さをコントロールし、与えられた刺激に対して起こる制御(Reactive)
・選択的な動きや強さを要求する前には、正しい方向づけが必要
・臨床上、ReactiveよりもProactiveの制御が特に重要

>>姿勢制御について、詳しくは、
【 姿勢制御とは 】をご覧ください。


そのProactiveの部分について、私は臨床の中で、

・定位のためのBOSの準備が出来ているか
・予測的姿勢制御の質はどうか
・コアの活動が十分かどうか
・姿勢を変えた際にもそれを維持できるかどうか

ということを頭に入れながら評価、治療に取り組んでいます。


この内容について、まとめていきたいと思います。

定位(オリエンテーション)とは?

支持基底面(BOS)の中に身体質量中心(COM)が保持できるように、アライメントを維持・修正する能力です。 


これにより、環境から適切に感覚情報を受け取ることができ、正しい方向へ向かって姿勢や運動をコントロールすることができます。

立位姿勢での身体は、重力によって常に鉛直下方向に牽引されています。

それに対して生じる床反力をBOSである足部・足関節が感じ取ることが出来ると、伸びていく方向(抗重力方向)が分かり、時刻々と変化する床反力を検知出来ます。



例えば、プッシングという言葉を使わせて頂きますが、非麻痺側で麻痺側へ突っ張ってしまう症例をイメージしてください。

接地している床面や座面に対して身体を垂直に保つことができないので麻痺側へ押すような反応になってしまいます(Reactive)。

これに対して、セラピストが姿勢を修正するために麻痺側から押し返すとどうなると思いますか?

より強く非麻痺側で押し返してしまいます。

では、どうすれば良いでしょうか?



様々な考え、介入方法があると思いますが、一つの考えとして、まずはReactiveの要素を取り除いてみましょう。
ベッドを高くして、接地している足を離してみます。

そして、Proactiveの要素に対して介入します。

課題や環境によってオリエンテーションと安定の要素は変化しますが、感覚をしっかり受け取ることが出来る準備(BOS)や、抗重力方向に活動できる中枢部の準備が必要です。

そうすることで、垂直方向へのオリエンテーションが得られるということです。また左、右からの感覚があるから、真ん中という軸がわかるようになります。(正中オリエンテーション)

その後で、少しずつ足を接地していき(Reactiveの要素を増やしていき)、目的とする課題に挑んでいく事が良いと考えます。

予測的姿勢制御について

予測的姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustments)とは
目的とする運動・動作、予想される身体の外乱に先行して働き、
フィードフォワードのコントロールと呼ばれます。


主に皮質橋網様体路、皮質延髄網様体路が関与します。

皮質橋網様体脊髄路は、主に同側の体幹・骨盤・四肢近位部の姿勢筋緊張のコントロールを行い、運動開始前におこる姿勢コントロールに関与しているとされています。

皮質延髄網様体脊髄路は、主に反対側の四肢近位部(~遠位部)の姿勢筋緊張のコントロールを行い、運動に随伴して起こる姿勢コントロールに関与しているとされています。


臨床の中で、この経路自体は目で見えるものではありませんが、患者さん自身の四肢末梢の動きやセラピストによる誘導に先行して、COMを高い位置に維持できるかどうか(抗重力活動)を評価する必要があります。


体幹(中枢部)が安定することで、足底(末梢部)からの感覚情報を有効に取り入れること(足部の選択的な運動が可能)が出来るようになります。

APAの効率性は足関節戦略の状態やアライメントに依存し、 足関節戦略の程度はAPAの状態により決まります。

コアスタビリティについて

抗重力方向への活動、随意運動のための安定性の要の部分で、体幹の安定性を指すコアスタビリティという用語があります。

この「コア」は、4種類の筋が一つのユニットを構成しています。
(各筋群の詳細は別でまとめていきます)

・横隔膜
・腹横筋
・多裂筋
・骨盤底筋



この体幹の深層部の4つの筋肉が協調的に活動、拮抗しあいながら適切な腹圧を維持するという能力は、スムーズで負担のない人の動きを実現するのに必要不可欠なわけです。

深層筋がしっかりと運動の方向を調節することにより、それを土台に表層にある大きな筋が力を発揮できるようになります。

また、予測的姿勢制御と反応的姿勢制御の基礎となり、身体質量中心(COM)を高い位置に保つことを可能にしてくれます。

そして、私たちはただ突っ立っているだけでなく、生活する上でいろんな動き方をします。
姿勢変換の際にもこのコアが維持できるかどうかを評価する必要があります。

例えば、座位から寝ていく動作では、非対称な姿勢や屈曲の動きを伴います。

4つの筋群が協調的に働き、ユニットの形を変え、腹圧を維持しながら動けると分節的で、より滑らかな動作となります。

ここで、もう一つ考えていただきたいこととして、
肩甲骨や股関節もコアに大きく関わっているということ。
右の図のように内閉鎖筋は骨盤の内側にも付着していることもあり、股関節の内外旋の動きは非常に重要になってきます。

介入のヒント 
ヘンネマンのサイズの原理から考える

Henneman(ヘンネマン)のサイズの原理
 筋収縮の程度は運動単位の発射頻度と、活動する運動単位の数、各運動単位の活動のタイミングの一致によって変化します。運動単位の発射順序は一定しており、閾値の小さい運動単位がまず活動し、しだいに閾値の大きな筋が活動に参加します。

筋肉ではまず、「サイズの小さな運動単位」が動員されます。
サイズの小さな運動単位は大きな力を発揮するのには適していないので、まずはこの運動単位が動員されるというわけです。

そして、負荷が大きくなるにつれて、大きな力を発揮するのに適した、「サイズの大きな運動単位」動員されていくようになります。


つまり、速筋線維より遅筋線維、二関節筋より単関節筋、表層筋より深層筋など小さい筋群が最初に働くべきなのです。

介入する順番もその順番で考えていくと非常に分かりやすくなります。

コアスタビリティも深層の筋で構成されていますし、立位姿勢であれば、唯一地面に接地している足部の内在筋から介入していくべきなのです。

足部の選択的な運動が必要になり、感覚を受け取れる状態にすることで、足底から適切なオリエンテーションを得ることができるようになるのです。

まとめ

・定位のための重力、床反力、BOSの関係を知る必要がある。
・姿勢反応である足関節戦略の状態を評価することで、予測的姿勢制御の質・効率性を評価出来る。
・コアスタビリティについて、関与する筋群を把握して、介入の順番を考える必要がある。

今回は定位(オリエンテーション)についてまとめてみました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

折れない心で、地道に情報を発信していきたいと思います。

参考文献
・Eric R.Kandel et al.(2014);PRINCIPLE OR NEURAL SCIENCE

・Thomas W. Myers(2009):Anatomy Trains

・Sapsford, R.R., Hodges, P.W., Richardson, C.A., et al. :Co-activation of the abdominal and pelvic floor muscles during voluntary exercise, Neurourology and Urodynamics, 20, 31-42, 2001.