感覚入力について

感覚入力について

はじめに

感覚」について学ぶことは臨床上、非常に重要です。

しかし、知識として知っただけでは、使いものになりません。
技術として練習しないといけません。

セラピストの手から何を伝えるべきなのでしょうか?

それは、


対象者に「動くための感覚情報」を提供することです。


一方的に伝えるだけではなく、対象者が感じ取ることのできる
「感覚情報」を探るといったことも重要です。


動く際に適切な感覚情報の入力が必要であるということを
対象者に改めて経験してもらうことがハンドリングの大きな意義だと考えます。


では、「良い感覚」と「良くない感覚」とは?
その違いが「分かる」という事は、「分けることができる」ということ「使い分け」ができるということだと考えます。

そこで今回は、
感覚入力についての「知識」と「感覚を鋭くするコツ」をまとめていきます。

感覚入力とは

感覚入力→対象者の行為に変化をもたらすこと。

感覚・知覚・認知の定義

感覚
感覚器官が刺激されたときに生じる意識経験。生体内の変化あるいは生体に対する刺激に反応して生体の恒常性を保つために必要な機能である。

知覚
感覚器官を通して外界や身体内部に関する刺激を受容し、中枢神経系において刺激に関する情報を処理していく過程、およびそれにより生じる主観的経験を意味する。


認知
環境世界に意味を与えるプロセスである。それは生物が外界にある対象を知覚したうえで、それが何であるかを判断したり、解釈したりすることであり、知覚情報処理に基づいて過去の自分自身の経験に基づく記憶に照らし合わせ判断するプロセス。知覚、注意、記憶、表象、象徴、言語、そして判断といった高次脳機能が統合的に関与する。

樋口・森岡(2008)

セラピストの徒手的な介入により受容器に刺激が加わり脊髄を上行し(感覚)、中枢神経系で統合される(知覚)。
得られた情報に対して他の部位も関与しながら、下降路として脊髄へ向かい運動が出力される(行為)。


徒手的に介入することで、感覚の部分で問題が生じているのか、または知覚処理の部分で統合することが上手くいっていないのか、出力の部分で問題が生じているのか、仮説を立てながら評価・治療することが必要です。

感覚と姿勢制御

姿勢制御に重要な役割を果たす 3 つの感覚

人は大きく3つの感覚入力に基づいた処理を行っています。
・視覚
・前庭感覚
・体性感覚(表在感覚/固有感覚)

これらの感覚入力が中枢神経系で統合され、姿勢制御に利用されます。これら3つの感覚は、年齢や状況によって重み付けが異なります。

健常成人の重み付けは、体性感覚70%、前庭感覚20%、視覚10%程度と報告されており(Horal 2006)、環境や課題によって変動していきます。

脳卒中患者さんでは?

入力される感覚情報の処理過程で、誤って一部の感覚情報に依存度を高めてしまうことが考えられます。

脳卒中患者さんでは、特定の感覚への依存度が増大、もしくは低下することで、重力環境への不適応をきたし、それが姿勢制御の問題として観察される可能性が あります。


セラピストは直接対象者に触れて、固有感覚情報を提供し、中枢神経系に働きかけることができます。

動く準備、出力の変化を導くこと、脳に働きかけることがセラピストの役割と言えます。

そのため、入力源の知識は大切であり、固有感覚情報を受け取る代表的な受容器である筋紡錘ゴルジ腱器官の知識は必須です。

筋紡錘とゴルジ腱器官

筋紡錘
筋線維に対して並列に配列されており、筋の長さや変化の速さを感知する。
筋紡錘からの情報はIa線維とII群線維によって伝えられる。
静的感受性:筋の長さの情報
動的感受性:筋の伸張速度の情報

ゴルジ腱器官
筋線維に対して直列に配列されており、筋張力を感知する。

ゴルジ腱器官からの情報は、Ib線維による反射(自原抑制)があり、昔の生理学の本には抑制に働くと記載されていました。

しかし、
Ib介在ニューロンは中枢神経系によりコントロールされており、活動場面によって抑制と促通の切り替えが行われるそうです。

例えば、

立脚中期から後期にかけて下腿三頭筋の収縮が起こり、ゴルジ腱器官が抑制に働いてしまうと、身体質量中心が下がり、十分な荷重・蹴り出しが出来なくなります。

Ib介在ニューロンへの刺激は、荷重時では促通に働きます。

逆に歩行の遊脚時などの空間でコントロールする場合は抑制に働きます。

➡︎➡︎➡︎
筋紡錘の静的、動的成分、ゴルジ腱器官の特性を考慮してハンドリングすることが重要です。

これらの情報は脊髄小脳路により小脳へ送られ、運動や姿勢維持などの調節に関与します。



姿勢制御について、詳しくはこちらをご覧ください。
【 姿勢制御とは 】

運動学習について、詳しくはこちらをご覧ください。
【 運動学習 】

ハンドリング について

触れるということ、

それは物理的な接触ではなく、関係性や意味のある接触でないといけません。

ウェーバー ・フェヒナー の法則

ウェーバーの法則:「弁別閾は、刺激量に比例して変化する」という法則。
・フェヒナーの法則:「感覚の強さは刺激の強さ(水準)の対数に比例する」という法則。


たとえば、

・100gに10gを足したときに増えたと感じる「感覚量」は、200gに20gを加えたときに増えたと感じる「感覚量」に等しい。
・100の刺激が倍に増加して200になるときの感覚量と、200の刺激が倍に増加して400になるときの感覚量の変化は等しい。

・・・。少し分かりづらいので、


簡単に言うと、

力が小さい時には少しの変化、『違い』を感じることができるが、力が大きい時は少し変化は感じにくく、大きな変化しか感じ取れない。
テレビの音量が1から0になると音が消えたのは分かりますが、MAXの音量から1つ下げてもその違いはわかりづらいと思います。


リハビリに当てはめて考えてみると、

対象者がより感覚を受容できる繊細な身体になり、動きを改善するためには、
対象者が楽に動けるようになり、『違い』を感じ取る能力を高めるてあげること。

セラピストとしては、感覚を鋭くするには・・・
ハンドリング 中に対象者の細かい変化を感じるためには、刺激、力そのものがまず小さくなくてはならないということ。力任せに動かしていてはダメということです。

課題の構成要素を考える

目的とする動作や課題はどのような筋活動が求められるのかを明確化することが求められます。

ハンドリングを行う前にセラピストは、目標とする課題の構成要素の理解が重要です。


筋活動は、求心性なのか、遠心性なのか、遠位部と近位部の関係。

運動する部位はどこなのか、安定しておく部位はどこなのか、など。

身体が一塊になって動いてしまわないように、選択的な動き・刺激が必要になります。

まとめ

・感覚・知覚・認知の定義を理解し、どこの部分で問題が生じているのか、整理することが重要。

・筋紡錘、ゴルジ腱器官の特徴を理解してハンドリングすることが必要。

・具体的にどこに対して、どんな感覚入力を行うのかを明確にした、選択的な刺激が重要。

・一方的な感覚入力ではなく、対象者の感じ取れる情報、違いの分かる感覚情報を提供していくことが重要。

参考文献、参考図書
・樋口貴広、森岡周:身体運動学 知覚・認知からのメッセージ、2008

・Horak FB. Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls?. Age Ageing. 2006 Sep;35 Suppl 2:ii7-ii11.